医者の男が、家で救急搬送された。医者の嫁『食中毒で』警察「ちょっと家を調べさせて」嫁『』とんでもない事実が…

10年くらい前の、連休の時の話。

とある田舎へ一人旅した。
旧街道沿いの「商人宿」ふうの旅館に泊まった。

部屋に入って一休みしていると、
女将さんが宿帳を持ってきた。

女将さん
「ご旅行?」

「ええそうです。××(マニアな史跡)を見に」
女将さん
「あらまー、こんな寝ぼけたような町にそんなもんあったの」

連休というのにその日の泊り客は私だけで、
女将さんは暇だったようで、
宿帳に記入が終わってからも、
お茶を淹れてくれたり
付け合わせのお菓子の説明をしてくれたりで、
ちゃぶ台を挟んで私の向かいに腰を落ち着けてしまった。

しかし私はこういう旅先での世間話が好きで、
家族経営の宿や飲食店を選んでいる。


「寝ぼけたようなって、
でも何事もなくて平和なのが一番じゃありませんか」
女将さん
「何事もなく……、
あらそう言えばね、こないだ大騒ぎがあったのよ」

「えっ、どんな?(来た来たっ!(喜))」

旅館の数軒先に内科医院があるのだが、
女将さんの話では、1か月ほど前、
そこの医師=ご主人が倒れて、
救急車で病院に担ぎ込まれた。
幸いにして大事には至らず、
数日で退院してきたそうだが、
医院の奥さんの話によると、食中毒だったそうだ。

医師が食中毒なんて、と
女将さんたち地元コミュニティはあきれたが、
実は、食中毒ではなかった。

何日かして医院に警察がやって来て、
家の中を調べていった。
さらに数日して、奥さんが、警察に連れていかれた!
医院の息子さん(大学生)の話では、
奥さんが、夕食の焼き鳥の串に
キョウチクトウ(夾竹桃)の枝を使って、
食中毒に見せかけて、
医師をしなせようとしたんだそうだ!

でも食中毒とは症状が違うのですぐばれて、
警察沙汰になった。


「キョウチクトウって毒があるんですか?」
女将さん
「そうらしいのね、
なんか誤って食べちゃってなくなった例もあるらしいけど、
お医者さんの場合はそんな量じゃなかったらしくて」


「でもなんでまた、そんなドラマか小説みたいな手口で」
女将さん
「それがさ、財産狙いだったらしくてね、
奥さんて後妻さんなのよ、
お医者さんがフリンして息子さんの母親を追い出してさ、
その女を家に入れたんでね、
息子さんが怒って口きかなくなっちゃったって、
お医者さんが愚痴ってたのよね」


「まあ、でもそれは奥さんが犯人かしら。
もしかして、父親を恨んでた息子さんが……」
女将さん
「あらあら、それもありそう。でもね、黒幕がいたのよ」

「黒幕!」
女将さん
「それがねえ」

「うんうん!」

いきなり、部屋のふすまがスパーン!と開いた。
女将さんも私も座ったまま飛び上がった。
怖い顔したご亭主(女将さんの旦那さん)が
部屋の入口に仁王立ちして、
「何してんだ!長居してお客さんの邪魔して!
風呂に入っていただけないだろう!」

女将さんはぱっと立ち上がり、
「ほんとだごめんなさいね、
お風呂入ってちょうだい、廊下の突き当りよ」と
部屋を出て行ってしまった。

私は急なことで呆然としたが、
二人が去って閉まったふすまにすがりついて、
「風呂なんかいいから、
話の続きを、オチを聞かせてぇぇぇぇ~」とうめいた。

その夜はもう女将さんを見かけなかったので、
翌朝の朝食の時に話の続きを聞こうと思ったら、
朝食とチェックアウトは娘さんの担当で、
結局「黒幕」の続きは聞けなかった。

時々思い出して、
あの旅館にまた泊まってみようかと思っていたら、
2,3年前、HPに閉店のお知らせが載っていた。残念。